大分県ではICTを活用した教育を推進するため、学校現場、市町村教育委員会及び関係機関との連携を密にされています。ICT教育推進役の「ICTスマートデザイナー育成事業」をはじめ、学校現場でのさまざまな取り組みを紹介しているYouTube「大分県教育庁チャンネル」の配信など、斬新で興味深い活動を展開しています。
教職員出前研修向けの備品として、iPadの充電及び設定用機器に、弊社のUSB-haco10をご採用いただいております。大分県教育庁 教育財務課 情報化推進班 指導主事の 土井敏裕 氏にお話を伺いました。
MT-planning鈴木(以下鈴木):今日はお時間いただきありがとうございます。 出前研修や各種セミナー、いつもお忙しくされていますが、今日もその帰りですか?
大分県教育センター 土井敏裕 様
(以下土井様):そうです。今日は小学校で午前中一本を2時間行ってきました。今(2017年8月)は毎日2本ずつずっと入ってます。夏休みのスケジュールこんな感じです。
小学校、中学校、高校、特別支援、全部ですね。僕の業務の大半をこの出前研修が占めていて、7月もこんなスケジュールでずっとやっていました。11月くらいまでずっと出前研修のスケジュールが埋まっている状態で、年間100件以上研修を開催しています。
MT-planning三ヶ尻(以下三ヶ尻):研修は同じ学校に何回か通われるんですか?
土井様:要請が多いので、おそらく年間2回同じ学校にはいけないですね。
三ヶ尻:一回の研修で出来る事ってかなり限られてきますよね。
土井様:2時間で終わらせる内容でまとめています。今日は写真を撮る練習を30分、マークアップで画像編集し、Airdrop、Airplayをつかって画像を送る練習をおこない、その後GarageBandで作曲。iMovieでまとめのムービーを作り、Keynoteに貼り付けるまで一連の操作をおこないました。
今日の出前研修先は去年一度行っている学校なので、去年の研修よりワンランク、レベルをあげました。次にはプログラミングやりたいというリクエストがありましたね。
三ヶ尻:土井先生はいろいろな方面で活躍されていますが、出前研修以外の活動を教えてください。
土井様:大分県には教育情報化推進プラン2016という取り組みがあります。推進プランの実行にあたっては、組織ごとに単独で行うのではなく、教育庁各課の課長が集まって協議し最終的な決定をします。
私は課をまたいで連携を強めていく横の動きのお手伝いをしています.
帰国・外国人児童生徒の受け入れ等は教育庁人権・同和教育課が中心となり支援しているのですが、外国籍の子どもたちの日本語教育が進まないところをICTを活用して改善できないか検討する委員会のメンバーにも入っています。
また安心安全支援課では、不登校で学校に行けない子供達の遠隔支援的な対応もおこなっていて、そちらもお手伝いしています。
鈴木:校務支援も対応されているんですか?
土井様:県立高校ではすでに7年前から独自システム「Arms」を運用していて、現在中学校版を一昨年から開発を進めています
三ヶ尻:具体的にどのようなシステムなんですか?
土井様:生徒の出欠席や成績、統一した帳票、調査書、指導要項、会議資料など多種多様なデータを一括管理しています。
入力フォーマットが統一されています。報告書も全て同じフォーマットで一括に集計が取れるので、管理側の作業時間も大幅に短縮されています。
一般的に市町村によってシステムが異なりますが、県立に関しては統一しています。県内どこでも同じシステムなので、操作は一度覚えるだけでいい。あと大きな特徴としてはヘルプデスクの設置です。これは市町村に関係なく対応しています。また大分県にはOEN【Oita Education Network(大分教育ネットワーク)】システム※1があるので、そちらの対応が主となっています。
*1.Oita Education Network(OEN):
大分県内の教職員をつなぐネットワークシステム。Google Appsを利用したシステムで、メール、カレンダー、ドライブなどを利用。
パスワードが分からなくなりました、といった軽微な内容も、全てヘルプデスクで対応しています。
先生方は全員メールアドレスとアカウント持っています。僕は自分のスケジュール表をオープンにしているので、先生方はカレンダーを見て、私のスケジュールの空きを確認してから出前研修の依頼の連絡をくださっています。
鈴木:OENはいつからですか?
土井様:2011年から。ドライブ容量を無制限にしていて、先生方とのデータ共有もスピーディです。例えば、初任者研修で動画制作のワークショップを行った際、出来上がったiPadのデータをAirDropで僕に送ってもらって、パワーポイントに変換してドライブにアップロードして共有する。受講者に共有してあげたら成果物を持ち帰れるし、また使ってもらえる。
いま第2弾として生徒の授業用クラウドの整備を県立学校で進めています。
実は一部の学校ではすでに課題提出用に利用しているところもあるのですが、今回整備をする学校に関しては、クラウドも一緒に推進をしようと思っています。今OENクラウドとoffice365と両方使いながら検証を進めています。GoogleならClassroomやメールも使えるので、そのあたりの活用もカギになると考えています。
鈴木:遠隔授業も積極的におこなっていらっしゃいますよね。
土井様:タブレットを通して双方の生徒が英語で遠隔交流しています。その他、隣接する学校と病院を映像と音声で結ぶ遠隔授業もあります。病院に入院している生徒は外へ出られないので、学校に所属はしているけれど登校することができないのです。
でも、ICTを活用すれば運動会や学習発表会にも参加することが可能です。例えば運動会の場合、病院内の生徒には、ベッドサイドに競技のミニチュア版を設置し参加してもらい、得点もきちんと計上される環境を作ります。校内でその様子を見ている生徒は一生懸命応援してみんなで盛り上がるんです。
鈴木:特別支援学校におけるICTの活用は学習環境を変えられますね。
土井様:とても意義深いと思います。
最初に環境を整えることができれば、あとは現場の先生が継続して活用してくれることがうれしいですね。こういう活動はやらなきゃいけないと思います。
鈴木:弊社のUSB-haco10はどのように使われていますか?
土井様:県立高校では各学校に1台管理用のMacが配布されていています。
大分県教育委員会が「Apple School Manager」のIDを持っていて、各学校に「コンテンツマネージャー」のIDを振っています。先生達はこのコンテンツマネージャーIDで生徒用のiPadを管理しています。
VPP(Volume Purchase Program)のストアでライセンスを購入したアプリは、USB-haco10を使って管理用MacからiPadに配信。先生は一人一台ずつiPadを持っていて、個別のアップルIDを大分県教育委員会で配布しています。iPadが70台あったら70台すべての一括管理をコンテンツマネージャーでおこなっていて、この運用方法の研修も開催しています。これらはすべて「Apple Configurator 2」でアプリのインストールからアップデートまでおこなっています。
三ヶ尻:先生方は通常、WindowsPCを使われていると思いますが、管理用のパソコンがMacBookでも運用に問題はないですか?
土井様:管理方法の研修も行っています。また、クローズドのiPadQ&Aのサイトを作って、丁寧な内容のマニュアルも作成しています。
各学校、学校長と情報化推進リーダー、情報担当教員、各教科の代表教員等で10数人のチームの名簿を提出してもらい、この選出されたメンバー向けに管理研修を行います。研修を受けたメンバー10人は、アプリやデータの流し込み作業を自校内で完結できる状態までスキルアップしています。
土井様:ICTスマートデザイナー*2それぞれが、自分のクラスで使用したICT機器を紹介し、どういうところに考慮して、どういう置き方にしたとか、情報共有しています。子どもたちの意見も含めて、安全性、発表しやすい形、動線をどのように考えればよいのか等も、研究の対象にしています。教室の中で本当にいるもの、いらないものをきちんと考えて教室環境をデザインすることは、意外と見落としがちだけれど大切だと考えます。
*2.ICTスマートデザイナー
大分県教育委員会が、教育情報化に向け、タブレット端末等ICT機器を活用した授業を研究、実践できる教員を募集し育成している事業で、教育情報推進のリーダーとして活躍している教員。
今回、県立高校にUSB-haco10を導入しましたが、私はUSB-haco10以外、収納ケースなどは必要ないと考えていました。端末の出し入れが面倒じゃないですか。10台程度のiPadなら平積みしてその上にhaco10を載せて使えばスペースも少なくて済むし、持ち運びも楽だし。でも現場の先生からは、校内の管理上、鍵のかかる収納庫は必要だと言われました。実際、校内で使ってみて初めてわかることですね。そうなると、持ち運びできるコンパクトな収納庫が必要になってくる。取っ手が付いていれば高校生2人なら余裕で運べますし。
鳥居:コンパクトな収納庫なら、分散して置いておけますしね。取っ手付きの収納庫(Tablet*Cart Secure2 TOTTE)を開発したので、ぜひ使っていただきたいです。現場の意見を聞かせていただけるのは、ありがたいです。
現場で必要と思ってもらえる製品を、今後も開発していきたいと思います。
今日はどうもありがとうございました。
本記事は2017年8月時点の取材にもとづいた内容で構成しています。
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