エム・ティ・プランニング株式会社はタブレットを授業に使ってみたいけれど、タブレットを授業に使う環境を整えることが難しい学校の先生方に、iPadやUSB-haco10をはじめとするICT機器のお貸し出しをしています。
稲城市立平尾小学校 野中美幸教諭に2016年9月より約2ヶ月間、小学1年生の研究授業にiPadを8台とUSB-haco10をお貸しさせて頂き、ロイロノートを使った国語と生活、図工の研究授業にご活用いただきました。
野中美幸先生と都留文科大学にて教職課程の授業にタブレットを積極的に活用されている、都留文科大学文学部国文学科准教授 野中潤先生ご夫妻にお話しを伺いました。
今回の野中美幸先生の成果は、2017年1月28日には杉並区立杉並第一小学校にて日本国語教育学会の研究会にて成果が発表されます。
MT-planning鈴木 (以下鈴木):今日はお忙しい中、お時間いただきありがとうございます。よろしくお願いします。今回は、どういうキッカケでiPadを使った授業をやってみようと思われたのでしょうか?
稲城市立平尾小学校 野中美幸教諭
(以下野中教諭):日本国語教育学会の小学校部会で1月に研究発表会があるのですが、そこで単元学習の発表をすることになりまして(笑)。
あるとき、校内の作品展に、全校の子どもたちの作品の制作過程などを、スライドショーを音声なしで、テレビで流すという企画案があり、もしかして「これ、(iPadがあれば)子供に作らせることができるかな?」と思いついたのがきっかけです。
主人(都留文科大学文学部国文学科 野中 潤 准教授)がロイロノート(以下ロイロ)を使用した授業を普段から行っていてタブレットを使った授業の話を聞いていました。でも、いつも(野中美幸先生の勤める稲城市で授業に使うのは)無理でしょと自慢話を聞いているだけでした。
鈴木:野中潤先生が先にiPadを使った授業をされていたとのことですが、具体的にお聞かせいただけますか?
都留文科大学 文学部国文学科
野中 潤 准教授(以下野中准教授):今年度より都留文科大学に勤務していますが、前職は聖光学院中学校高等学校でした。こちらでは、ロイロは使っていませんでした。iPadも授業の中で、自分のiPadの画面を見せたりするのが主でした。
ロイロの杉山浩二さんとは2年くらい前にお話を伺ったことがあって、授業にロイロを使いたいなと思っていたので、都留文科大学に行くことになったのを機に、都留文科大学の教職課程の学生達に、ロイロを使えればユーザーの裾野を広げることができるのではないかと思い、杉山さんに「使わせてもらえないですか」と相談しました。
大学ではすぐに16台のiPadを導入できて、ロイロのアカウントもできたので、早速使いはじめました。完全に学生が一人ひとり端末を持っていて、こちらが教材を配布して、授業ができる状況になってきたと、そんな話を(野中美幸先生に)していました。
鈴木:なるほど。平尾小学校でiPadを使った授業をしようとしたときに、タブレットはありませんでした。そこでiOSコンソーシアムの文教ワーキンググループの野本竜哉さんに相談されて、iPadを貸してくれる企業を探していると話があって、今回、弊社よりお貸し出しに至りました。
鈴木:学校の中では、どのような反応でしたか?
野中教諭:授業で使うということについては「研究発表のための期間限定授業」ということで校長先生にお願いして、「どこかしらから新しい風を入れなくちゃいけないものだから」と説得しました。校長先生も「(今の)稲城市ではダメだけど、そういう時代でもないから、いいんじゃないか」と。
鈴木:使い方はどのように教えられたのですか?
野中教諭:まずはタイマーをかけて、「ピピッと鳴ったらみんな黙って手を上げてね」といった、かんたんな約束をしてから渡して、「机の上から持ち上げたりしない」とか「持って立ち歩いたりしない」とか、「机と机の間には置かないで机の真ん中に置くように」など。そして、使うアプリは「ロイロだけ」という約束にしました。
(iPadの使い方は)教える前から多くの児童がわかっていましたね。
ロイロの使い方に進んでからは、カードの出し方とか、お絵かきの描き方を練習させて、発表作品を作るときにはiPadを渡す前に「班のめあて」を決めさせました。
鈴木:その順番が大事ですよね。渡してしまってから「めあて」って言われも、収拾つかないですからね(笑)。
野中教諭:児童には、グループの4人にちゃんと役割を決めました。普段から「班長さん」、「給食長さん」、「掃除長さん」というのと「配り長さん」という4つの役割があって、それが週替りでローテーションしていきます。それで、iPadを持つのが班長さんで、録音したり、書いたりするのも、その順番に添って進めていきました。
週に何回も集中して使ったので、取りに行くとか、持っていくのは班長にやらせるのだけれども、その他は順番に、「○○は△△さんがやってください」とか決めたり、あとは子どもたちの班の中での順番があって、いろいろな場面でも使っているので、誰から使い始めるというのは、班に任せました。
鈴木:低学年にそのアイデアはとても良いですね。よく、高学年や中学生になってくると、タブレットをよくさわる子とさわらない子が分かれちゃうということが起きて、得意な子だけ積極的に操作して、他の子は見ているだけということが起きてしまって、主体性という視点から考えると、やはり1人一台でないと難しいところが出てきてしまいがちですが、そういった形で強制的に順番で役割がつくと、均等に回りますね。
野中教諭:iPadが苦手な子にも周りが教えて上げて使わせるという約束もしましたね。
野中教諭:全体の流れとしては、生活科でチャボと遊んで、それを国語の絵日記で書かせるというのを、やりました。まず子供たちにチャボを好きにさせて、秋には作品展があるので「チャボの絵を書こうよ」と。で、せっかく書くんだから、どうやってチャボの絵を仕上げたのかを、「おうちの人に知らせたくないかな」ということで、相手や目的を設定させて、どうやって知らせるかということまできて、そこではじめて、実はiPadでこういうことができるんだよ、って見せました。そして練習単元で二学期の班の自己紹介にロイロを使ってみようと。
鈴木:布石の置き方がさすが上手ですね。
三ヶ尻:あたしものせられそうな感じ(笑)
野中教諭:具体的には、生活科でチャボと遊んで絵日記を書く。そして図工では絵の背景を描いたりクリーム粘土でチャボの体を描いたりして、それも日記に残す。チャボの体を描くときには、もう一度飼育小屋まで行ってチャボの動きをよく観察しました。そして、自分はどんな格好で遊んでいるチャボを描こうか観察カードに描いておく。いろんな向きのチャボがいた方が楽しそうだね、なんて働きかけたりして(笑)。実際にクリーム粘土で描いたら、手のひらや指を使って描くんですけど、そのときの様子や気持ちもカードに書き足してと。粘土が乾いたら、最後にクレパスやマジックを使って、目やくちばしやトサカ、足などを描いて仕上げました。
音声入りのスライドショーを作るために、絵日記や観察カードを基にして説明原稿を書きました。チャボが羽をバサバサしていたとか地面をつついていたとか。よく見たら足が太くて強そうだとか、指が3本で長い鉤爪がついているとか。くちばしの形とか色。そういったものをよく見て、工夫してチャボの絵を描いたんだよ、っていうことを原稿にまとめました。そして、話す練習をして、自分達で作品紹介を録音して再生、確認させました。ロイロでのスライドショー作成に4時間。みんなで見て、あとは作品展の会場で公開しました。
授業の進捗は天気と密接に関係があって、9月は雨が多かったのでクリーム粘土でチャボの体を描く事ができませんでした。絵が仕上がらないことには作品の説明もできませんから、結局ロイロの授業は当初の予定より1か月近くのびてしまいました。粘土はパッと乾かないとカビが生えちゃったりしてしまうので。
鈴木:そんなことまで先生は考えているのですね。
三ヶ尻:授業は天気と関係するんだね。
野中教諭:(iPadでの録音は)簡単にできますから、録音して再生し、ダメだったらもう一回やり直しと、次々とやっていくんですね。写真カードに自分の声を録音して、それを班の友達と一緒に聞き直すことで、自己評価も相互評価もできる。これは話す練習にとても良いですね。
三ヶ尻:みんながハキハキ話せるものですか?中にはちょっと恥ずかしくて、みたいな子もいそうな気がします。
野中教諭:そうですね。これ(iPad)はほんとによく音を拾ってくれるので、ちょっと小さい声だったりしてもわりと録れちゃうんです。今回、ビデオ撮りをするってときには、小さい声だと届かないので「これは駄目かな?」って言いながら繰り返し練習していましたね。
鈴木:マイクがどこにあるかを理解してる子もいる。
野中教諭:口元に持ってきて。
鈴木:子どもたちの方が工夫する。ここはマイクだからココを押さえちゃだめとか。
野中教諭:うちのクラスでやったときには、国語の授業だから「(マイクに口を近づけるのは)それ、なし」って「いい姿勢で話してください」と伝えましたけど、もう一人の担任のクラスでは国語の授業とは関係ない授業でしたので、子どもたちはマイクに口を近づけて録画してね。
鈴木:そこは先生や目的によって変わってきますよね。
野中准教授:マイクがどこにあるか、って普通わからないもんね。
野中教諭:わかっているのよ、子どもたちは。私がわかってなかったんです。でも、若い先生は知ってるから、「周りがうるさくて」と言ったら、「だって、先生、こうやって喋ればいいじゃないですか」と言ってきました。それで子供がiPadを持ち上げようとしていたんだ、ということが後からわかりました。
鈴木:今回お手伝いさせて頂いて思ったのは、ICTの導入は草の根運動じゃないけど、根っこからやらないとダメだなと実感しましたね。実際にタブレットを導入となると、トップダウンだけではなく、現場の先生の立場からじわじわと、底を持ち上げていくお手伝いをしていかないと、と思っています。
野中准教授:ちょっとずつ進めて行く感じですね。この間も日本文学協会というところで、ラウンドテーブルというディスカッションをやって、ICT教育とか、アクティブ・ラーニングを国語科でどうやっていきますか?という話し合いをしたのですが、そのときのレジュメにQRコードを貼り付けて、グーグルフォームで簡単なテストを先生方にやってもらいました。
20人くらいのラウンドテーブルで、グーグルフォームはスマホを持っていて参加できる人が中心にやってもらったのですが、年配の先生などは、隣の人が入力するのを見ているだけでした。でも、その中に国語教育学会で重鎮の先生がいらして、そのときには別に何も仰らなかったのですが、その週に大学に行ったら、別の学科の国語教育の先生が「すごいことやっているんだって。先生に聞いたわよ。私にも今度教えて」と言われました。こんな小テストが簡単にできるんだってことを、その先生が知って、その話をまわりにしてくださってと、そういうちょっとずつ、ちょっとずつの積み重ねなんだと思いました。
鈴木:興味のある先生方は、積極的にいろんな公開授業などを見に行かれているけど、ほとんどの先生方は他の先生の授業を見る機会は、なかなか少ないと思うので簡単にこんな使い方があるんだっていう、ヒントを私たちもお伝えしていけると良いなと思っています。今日はどうもありがとうございました。
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